客室の床面積や照度・騒音について
構造的要件
それでは申請要件の最後になります。構造的要件をご説明します。
構造的要件とはお店の構造に関する要件になります。
今まで説明した人的要件や場所的要件は要件を満たしていないとどうすることもできませんが、構造的要件は基本的に内装を変更することで満たすことができます。
しかし、あなたが借りたお店が根本的に要件を満たしていないと内装工事に莫大なお金がかかる可能性があるので、最初から要件を満たしているお店を借りることに越したことはありません。
これを読んでどのようなお店が構造的要件を満たしているか理解しましょう。
構造的要件は施行規則(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則)の第7条に書いてあります。
- 客室の床面積は、和風の客室に係るものにあつては一室の床面積を九・五平方メートル以上とし、その他のものにあつては一室の床面積を十六・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。
- 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
- 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
- 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
- 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
- 第三十条に定めるところにより計つた営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
- 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
1.客室の床面積について
まず、おさえなければならない要件は客室の面積についてです。客室の面積は1室16,5㎡以上(和室を除く)なければいけません。しかし、これは客室が2室以上ある場合なので客室が1室の場合は面積要件はありません。
客室とは客に飲食をさせる場所などのことです。客室の例としては客席やカウンターなどが該当します。
客室が1つの場合は面積要件はないのですが、2室以上に客室を分けると面積要件が発生します。この面積は16,5㎡以上とかなりの大きさになります。約10畳です。
もしVIPルームなどの個室を作りたい場合は必ず面積を計算してから作るようにしましょう。
またVIPルームなどの個室がない場合でも客室が2つ以上になることがあります。
これは後述するような客室内の見通しを妨げる場合です。
この場合は見通しを妨げないように、書類作成上では客室を2つ以上に分けるのですが、この場合も1室16,5㎡以上の面積要件が発生します。
過去にあった例ですが、居ぬきでお店を借りたお客様からの依頼で風俗営業許可を申請しようとしたのですが、客室の内部に目隠しがあり、客室を分けて申請する必要がありました。しかし、客室を分けてしまうと面積が足りず要件を満たさないためお客様にこの目隠しを撤去するよう要望しました。
お客様は前回のお店も許可を取っていたので、今回も許可が取れると思っていたみたいですが、よくよく調べるとこの目隠しは、前のお店が許可を取った後に勝手に作ったもので、警察からも目隠しを撤去しないと許可は取れないと言われました。
このように前のお店が許可が取っていたからといって新たに許可が取れるわけではありません。
因みにこの撤去費用はお客様自身が払いました。また許可を取った後に目隠しを作るなど構造に変更を加える場合は警察に申請や届出が必要になりますので、それを怠っていた前のお店はかなり悪質だといえるでしょう。
2.客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること
外からお店の中が見えてはいけません。
一般的な飲食店では窓ガラス越しに外から店内を見渡すことができる飲食店も多いですが、風俗営業許可が必要なお店は外から店内を見えるようにしてはなりません。
ここは結構盲点になるところなのですが、例えお店の場所が地上○階みたいなところでも指摘が入ります。
そのため窓や出入口がガラスの場合は見通しできないようにスモークやカーテンなどを設置することが必要です。
またエレベーターから直接出入りできるようなお店も注意が必要です。エレベーターが外という解釈では外からの見通しを妨げないといけないので、お店に目隠しの壁を設置するなど対策が必要になります。
以前、外から中を見通せるお店の風俗営業許可申請をしたのですが、検査までに外から中を見通しできないよう何か対策をしてほしいとお客様に依頼したところ、お客様が失念していたことがありました。
そのため緊急で外からの見通しをできないようにコピー用紙を出入口一面に貼ったことがあります。
この時は何とか検査をとおしてもらえましたが、内心ひやひやだったことがあります。
3.客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
客室の見通しを妨げてはいけません。
例えば客室の真ん中にパーテーションを置いて客室を仕切ることはできません。
同じような考え方で客室の真ん中に背の高いイスやテーブルなども置いてはいけません。
この高さは一般的に1mとされています。
1.の客室の床面積でも説明しましたが、客室が2つになると面積要件が発生します。そのため客室が1か2では風俗営業許可の場合、大きな分かれ道となります。
また、この見通しを妨げるという解釈は都道府県ごとに異なります。
例えば東京都の場合は客室のどこか1箇所から客室全体が見通しができればよしとされますが、某県などは客室のどこから見ても見通しができなければ、見通しを妨げてると解釈されます。
またこの解釈は造作された設置物も該当するのでカウンターや戸棚なども該当する場合があります。
そのため見栄えをよくしようと、あれもこれもと造作を重ねた結果、いざ許可を取ろうとしたら取れない、なんてことも可能性としてはあるわけです。
これは居ぬきにもいえるので、内装だけでなく許可の要件も重視しましょう。
4.善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
風俗環境を害するものや公序良俗に反する写真や広告物などを店内に掲示してはいけません。
5.客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
客室の出入口に鍵をかけてはいけません。ただし、営業所の出入口と客室の出入口が同じ場合を除きます。
6.営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
営業所内の照度が5ルクスを超えていなければいけません。
基本的には客室で測られるのですが、5ルクスとは「新聞が読める程度の明るさ」とされています。
しかし、新聞が読めるかどうかは個人差があるので実際に計測したほうがいいでしょう。
当事務所では照度計を持っているので計測できますが、アプリもあるみたいです。
また客室1ヵ所だけでなく全体で5ルクスを目指した方がいいでしょう。実際に検査の時も警察や浄化協会は客室の何か所かで照度を測ります。
日中に計測する場合は外の明かりが入らないようにカーテンを閉めた状態で計測します。またカラオケなどの明るさは基本的に対象外になりますので照明だけで5ルクスを超えることが必要です。
五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備とは基本的にONとOFFのみのスイッチのことです。スライダックスや調光器のように明るさを調整できるものは原則取り外さなければなりません。
7.騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
騒音又は振動の数値が条例で定める数値を下回らなければなりません。
この数値は昼間と夜間で違いますが50デシベル前後となっています。
50デシベルとは静かな事務所やクーラーの音くらいの大きさだそうです。
以上で人的要件・場所的要件・構造的要件などの申請要件の説明は終了となります。
申請要件の確認が終わったら、次は風俗営業許可申請に必要な必要書類についてご説明します。