風俗営業許可申請に必要な用途地域と保全対象施設の調査
場所的要件
人的要件をクリアしたら次は場所的要件をクリアしなければなりません。
風俗営業許可は営業出来る地域が定められています。
理由は申請要件のページで書いています。
この場所的要件は以下の2つに分かれます。
- 用途地域
- 保全対象施設
1.用途地域
まずはお店の所在地の用途地域を調べなくてはなりません。
風俗営業許可を申請するためにはお店の所在地が商業地域などの一定の用途地域でなければなりません。
用途地域とは都市計画法で定められた地域地区の1つで、私達が住んでいる地域を全部で13種類に分けています。
そして、これらの地域のなかで風俗営業許可がとれる用途地域を各都道府県が決めています。
あくまで目安ですが、東京都の場合は「商業地域」、「近隣商業地域」、「工業地域」、「準工業地域」の用途地域だと風俗営業許可が取れるだろうと考えます。
そのため、上記の用途地域には風俗営業許可を取得しているお店が集まるようになっております。
特に駅前は「商業地域」が多いのでこのような傾向が強いです。
しかし、中にはライバルがいないところで風俗営業許可を取得したい、と考える方もいるはずです。
そんな時にお勧めなのが比較的大きめの道路沿いの店舗です。
道路沿いも「商業地域」や「近隣商業地域」など風俗営業許可が取得できる用途地域になっている可能性があるので、これからお店を借りる方は参考にしてください。
逆に用途地域が住居地域だったり、周辺に飲食店がない場合は風俗営業許可を取得できない可能性が高いのでご注意ください。
「○○区,用途地域」などで検索すると、役所によっては都市計画情報サイトを提供しているので詳細はそちらを参考にしてください。
2.保全対象施設の調査
用途地域に問題がなければ次に保全対象施設の調査をします。
保全対象施設とは病院や学校などのことをいいます。
保全対象施設は平成28年6月22日以前まで保護対象施設と呼ばれていました。そのため保護対象施設と保全対象施設は基本的に同じものを指します。
風俗営業許可は用途地域だけではなく保全対象施設が近くにあっても許可は取れません。この点が深夜営業許可と異なるところです。
つまり、用途地域が商業地域でもそれだけでは許可が取れるわけではないということです。
なぜならお店の近くに保全対象施設があると許可がおりないからです。
申請要件のページでも書いてありますが、風営法の目的は
若者の育成に障害を及ぼす行為の防止と風俗環境の保持です。
風俗営業許可が必要なお店が病院や学校の近くにあると、若者の育成に障害を及ぼすと国は考えているわけです。
確かに駅前は商業地域である可能性が高いため許可が取れる可能性は高いといえます。
しかし、最近は駅前の再開発がすすみ、駅前だからといって安心はできません。
この再開発された施設に保全対象施設が入居することも少なくないからです。
風俗営業許可が取れるかどうかはまずは地元の不動産に確認しましょう。
保全対象施設に該当するもの
先ほど保全対象施設は病院や学校などのことを指すと説明しました。
しかし、全ての病院や学校が保全対象施設に該当するかというとそうではありません。
我々行政書士はこの保全対象施設の調査が風俗営業許可の業務の最重要ポイントだと考えています。それだけミスは許されないですし、調査も大変だからです。
だから、ここでも全てのケースを説明することはできません。それだけケースバイケースになるからです。
それを踏まえて説明すると、まず保全対象施設も各都道府県によって若干異なります。なのでお店の所在地がどこなのか、そしてその地域の保全対象施設は何が対象なのか、を先に調べる必要があります。
次に保全対象施設の分類です。下記の表は例になるのですが、基本的に保全対象施設は学校、図書館、児童福祉施設、病院などに分類されます。
保全対象施設 | |
施設名 | 具体例 |
学校 | 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、盲学校、養護学校など |
図書館 | 地方公共団体、日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が設置するもの |
児童福祉施設 | 児童養護施設、保育所、助産施設、児童発達支援センターなど |
病院 | 歯科医院を含む医療施設で病床が20以上のもの |
診療所 | 歯科医院を含む医療施設で病床が19以下のもの |
そして、続いて分類ごとに調査します。例えば学校を調査するときは、まずは何が学校に該当するのかを知らなくてはなりません。
保全対象施設の学校とは?
基本的に学校とは学校教育法第1条を指します。
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
ここまで調べると自分のお店の周りにあってはならないものが分かるかと思います。
つまり学校教育法第1条の学校には幼稚園や大学などは該当しますが、保育園や専門学校は入らないわけです。因みに保育園は学校には該当しませんが、後述する児童福祉施設に該当します。
しかし、これだけではまだ足りません。
今度は学校に含まれる施設はどこまでが保全対象施設になるかを調べなくてはなりません。
例えば一般的に校舎があるような普通の学校は誰でも学校だと分かると思いますが、付属施設についてはどうでしょうか?
以前、経験したケースですが、お店の近くに幼稚園があり、幼稚園の校舎までは下記で説明する距離制限にかからなかったのですが、その幼稚園が所有する庭は距離制限にかかったため、この庭が保全対象施設かどうかを調査する必要がありました。
結果的にこの庭も保全対象施設に該当するという結論に至り申請を諦めたのですが、保全対象施設の調査とはこのようなことを常時しなければなりません。
保全対象施設の図書館とは?
同様に図書館とは基本的に図書館法第2条を指します。こちらも区や市が運営している図書館は誰でも分かると思いますが、日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が設置したものまでが調査範囲となります。
図書館とは(以下略)地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。
保全対象施設の児童福祉施設とは?
児童福祉施設は一番厄介です。なぜなら下記のとおり、児童心理治療施設など初めて聞くような施設が多いからです。
基本的に児童福祉施設は児童福祉法第7条を指します。
また児童福祉施設の中に保育所とあります。保育所とは聞きなれないかもしれませんが、保育所と保育園はほぼ同じと考えていいと思います。
問題はこの保育所の中で児童福祉施設に該当するものは何かということです。
保育所にも類型があり全ての保育所が児童福祉施設に該当する訳ではありません。
一般的に児童福祉法第7条に該当する保育所は認可保育園といわれていますが、厳密にいうと全ての認可保育園がこの児童福祉法第7条に該当する保育所になるわけではありません。
同じ認可でも都道府県の認可や市町村の認可など色々あり、基本的には小規模保育事業や家庭的保育事業、事業所内保育などの類型は児童福祉法第7条の保育所には該当しません。
この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。
保全対象施設の病院とは?
最後に病院です。基本的に病院や診療所は医療法第1条の5を指します。
一般的にはそこら辺にあるクリニックを病院と読んだりしますが、厳密にいうとクリックと病院は異なります。下記のように病院とは病床が20以上あるもの、診療所は病床が19以下のものを指します。
ただし、実務では診療所と名前がつくものでも病床がなかったり、その逆のケースに出くわす時があります。
そのため名前だけで判断するのではなくやはり調査が必要になるかと思います。
この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
2 この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
以上、保全対象施設について説明しました。
これらの保全対象施設の近くでは風俗営業許可が取れないということになります。
それではどれくらい近いとダメなんでしょうか?
東京都の場合だと用途地域によって以下の距離制限があります。
保全対象施設との距離制限
用途地域 | 保全対象施設 | 距離制限 |
商業地域 | 学校(大学を除く)、図書館、児童福祉施設(助産施設を除く) | 50 m |
大学、病院(第1種助産施設を含む)、診療所(8人以上の患者を入院させることができる施設) | 20m | |
第2種助産施設、診療所(7人以下の患者を入院させることができる施設) | 10m | |
近隣商業地域 | 学校(大学を除く)、図書館、児童福祉施設(助産施設を除く) | 100 m |
大学、病院(第1種助産施設を含む)、診療所(8人以上の患者を入院させることができる施設) | 50 m | |
第2種助産施設 、診療所(7人以下の患者を入院させることができる施設) | 20 m | |
工業地域・その他 | 学校、図書館、児童福祉施設、病院、第2種助産施設、診療所(患者を入院させることができる施設) | 100 m |
例えばお店の所在地の用途地域が商業地域なら20m以内に病院がなければ許可がおります。
しかし、お店の所在地が近隣商業地域なら50mと距離制限が変わるので注意が必要です。
保全対象施設の判断基準
保全対象施設の有無は許可がおりるまでに判断されます。
つまり申請時に保全対象施設がなくても許可がおりるまでに保全対象施設ができると不許可になります。
こんなことは滅多にないことですが、前例として市町村が風俗営業許可を取得できないように嫌がらせ目的でお店の近くに保全対象施設を作ったことがあるようです。
これはもちろん違法行為として取消されましたが、申請中に正当な理由で保全対象施設ができたら許可はとれません。
また、保全対象施設は建物が完全に建っていなくても、役所が建物と認識した時点で保全対象施設に該当する可能性があります。そのため建築中だからといって安心することはできません。
保全対象施設の調査が終わったら「営業所を中心とする100m半径略図」という書類を作ります。
書類の書き方は以下をご覧ください。
保全対象施設が確認できたら構造的要件をご説明します。